流産について
流産は決して珍しいことではありません。起こるべきして起こることが多いものです。「あんなことしなければよかった」と自分を責めてしまいがちですが、多くが赤ちゃん側の原因です。
流産の原因
流産をすると、自分の不注意だったと自分を責めてしまう人がいますが、自然の摂理なので、あまり考えすぎないでください。また、流産は全妊娠の10~15%と高い確率で起きています。「自分だけが何故?」と思いつめないでください。妊娠12週を過ぎると、今度は、子宮の出口がゆるんでしまったり、感染を起こしたり、あるいは子宮の形に異常があったりというような、母体側の原因によるものが増えてきます。
流産の症状
流産の症状は出血と痛みがあって、小さなお産と同じ症状を示します。
出血
まず出血で始まることが多く、加えて痛みが強くなると出血も多くなるのがふつうです。やがて子宮の内容物が全部出てしまうと出血はやみますが、一部でも残っていると、いつまでもつづきます。出血の色は鮮やかではなく、暗褐色かチョコレート色です。
痛み
妊娠週数が早いときにはそれほどひどくありませんが、あとになるほど強い痛みを伴います。下腹が張る感じや陣痛が始まり、やがて痛みは断続的になり陣痛のように規則性があります。足のつけ根がひきつれるような感じでふつうに起こる腸性の腹痛とは異なっています。
異物感
胎動を感じるようになってからの流産では、胎動がなくなり、おなかにひんやりした異物感があります。流産を、その程度や症状から分類してみると、いくつかのタイプに分かれます。
流産の処置
流産の兆候は急にあらわれることもありますが、たいていは徐々に進行します。まず、痛みや出血の症状があらわれ、流産の疑いが出てきたら、横になって安静第一にします。出血が始まっていたら、すぐに病院に行き、その内容物が血液だけか、ほかの内容物がまざっていないかなどを調べてもらいます。
流産が始まりかけている切迫流産のときには安静にして治療します。場合によっては入院して見守ることも必要です。もう妊娠をつづけられないとわかったときは、残念ながら子宮の中をきれいにする手術をします。
流産の予防
流産を予防するには、できるだけ妊娠を早く知ることが大事です。受精して着床し、胎盤ができるまでの14~15週くらいまでが最も危険です。早めに妊娠を知っていれば、注意して原因をつくらないようにすることができます。
次に、特に妊娠初期の日常生活での守るべきことを以下に紹介していきます。
①過労を避けて十分な睡眠をとる。
②かぜや下痢、便秘などに注意する。
③ストレスをためないで、ゆったりした気分で過ごすように努める。
④重いものを持たない。
⑤立ちっぱなしの仕事をしない。電車やバスでの長時間立ちつづけも避ける。
⑥階段の昇り降りに注意。
⑦はげしい性生活は避ける。
⑧仕事を持っている人は、場合によっては仕事内容の変更や勤務時間をずらしてもらうことも考える。
⑨習慣性流産や、前に流産をした人は妊娠前に子宮の状態を調べてもらう。
⑩水泳、旅行なども控える。
流産を繰り返さない為に
規則正しい生活をし、食事は偏食を避けて栄養のバランスを考えることがたいせつです。特に、ビタミンE、Bなど妊娠に必要などタミン類を多く含む食品をとることを心がけたいものです。また、骨盤内に充血を起こしやすいので香辛料は避けましょう。
はげしいスポーツや長時間同じ姿勢で緊張するような仕事などは控えます。特に習惧性流産では、繰り返さないために、妊娠前にあらかじめ子宮の状態をしらべておくことも必要です。
妊娠初期と中期の流産の違い
流産の原因をとり除き、予防するためにも、流産についての知識を持っておく必要があるでしょう。
妊娠初期
初期は原因不明の自然流産が多い妊娠8週目までは流産の危険が非常に高いです。流産の75%は妊娠16週目以前に起き、そのなかのまた75%は8週目までに発生しています。妊娠初期の流産がいかに多いかがわかると思います。
また、10代の妊娠や更年期近くなってからの妊娠も流産を起こしやすいといわれます。妊娠初期の流産はほとんどが原因のわからないもので、自然流産が多いですが、その意味からも早めに予防する心構えが必要です。
妊娠中期
中期の流産は原因がいろいろあります。妊娠中期の流産は、胎児がすでに発育しているので、むしろ早産に似ている性質を持っています。
その主な原因として、母体側の原因、つまり、転んだり、ぶつけたりといった外からの刺激や性交、または子宮頸管無力症や子宮筋腫などがあげられます。このほか、少なくなりましたが梅毒も引きがねになります。また風疹、トキソプラズマ症、ビタミン不足、栄養不足、甲状腺機能低下症、糖尿病、ストレスなども原因になりうるといわれます。しかし、このような原因については医師に相談することがたいせつで、自分で神経質になって悩むことはかえってよくありません。
子宮頸管無力症は手術で
妊娠中期になると流産してしまうという人がいます。習慣性流産、あるいは反復流産ですが、この原因の代表的なものが子宮頸管無力症です。財布のロがゆるんで中身がこぼれ落ちるように、胎児がある程度重くなってくると卵膜が破れて破水し、流産してしまいます。
これに対する治療法は、子宮の入り口のゆるんだ頸管をテープで縫縮する手術が有効です。しかし、手術しても100%安全というわけではないので、日常生活は安静第一にして、とにかく産み月までもっていくことがたいせつです。妊娠初期にみられる習慣性流産では子宮頸管無力症はないので、この手術は適応できません。ただ、子宮筋腫や子宮の形態異常などが原因のこともあるので、手術をするなどして治療することもできます。医師と相談して手術をしたほうがいいかどうかを決めましょう。
流産は、進行程度と状態によっていくつかに分類されます。
切迫流産
完全に妊娠が中断してしまう流産に対し、切迫流産は、出血やおなかの張りなど、流産の兆候はあるものの、妊娠は継続している状態をいいます。そのため、流産の兆候が治まれば、無事に出産を迎えることが多く、切迫流産が赤ちゃんの発育に影響することもありません。
稽留流産
稽留流産とは、赤ちゃんが子宮内で死んでしまっているものの、そのまま子宮内にとどまっている状態です。多くは自覚症状がなく、超音波検査ではじめてわかります。
進行流産
進行流産の場合は、子宮口が開いてしまい、赤ちゃんや付属物(胎盤のもととなるものなど)が流れ出ている状態で、もはや止めることはできません。
不全流産
進行流産がさらに進み、赤ちゃんや付属物がほとんど外に出てしまった状態。出血はまだ続いています。
完全流産
赤ちゃんや付属物が完全に外に出てしまった状態。出血はしばらくすると自然に止まります。稽留流産以外には、出血や下腹部の痛み・張りの兆候があります。量や程度は状態によってそれぞれですが、医師の指示を仰いでください。