妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)
妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)が重症になると、胎児が育ちにくくなったり、常位胎盤早期剥離(分娩前に胎盤から剥がれおちること)などで、危険な状態になることもあります。カロリーと塩分のとり過ぎには注意をしましょう。
妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)とは
2005年までは「妊娠中毒症」と呼ばれていた病気が、「妊娠高血圧症候群」という名称になりました。定義も変わり、「妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧が見られる場合」または、「高血圧にタンパク尿をともなう場合」とされています。
妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)の原因
妊娠によって血管や腎臓に大きな負担がかかることが主な原因で、妊娠後期に起こりやすいトラブルです。必ずしも生活習慣などが原因ではないので、予防するのは難しい症状です。
もともと高血圧だった人や、糖尿病、腎臓病を持病とする人、肥満気味の人は発症のリスクが高くなるので要注意です。さらに、胎盤形成障害やママの高血圧、糖尿病、肥満、双胎妊娠などが加わると、赤ちゃんが育ちにくい状態「子宮内胎児発育遅延」になったり、常位胎盤早期剥離を引き起こすこともあります。妊娠高血圧症候群と診断された場合、安静こすることが汗心ですが、自宅療養でも改善しない時には入院します。
妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)の症状
なお、タンパク尿は、尿中にタンパクがもれている状態のことです。腎臓の機能が低下し、母胎に必要なタンパク質が体外に出てしまっていることを示しています。検査で連続して2回以上陽性となると、タンパク尿が出ていると判断されます。
「早期発症型」と「晩期発症型」
妊娠高血圧症候群の症状が出てくるのは妊娠20週を過ぎてからですが、発症時期によって「早期発症型」(20~32週未満に発症)と「晩期発症型」(32週以降に発症)に分かれています。
赤ちゃんが大きくなるにつれて母体の負担が大きくなり、妊娠高血圧症候群にかかりやすくなりますが、早期発症型の場合は、赤ちゃんが小さいうちから症状が出たということなので、それだけ重症化する可能性が高くなります。
こんな症状があったら病院へ
1週間に500g以上の体重増加がある
急激に体重が増えたときは、心臓に負担がかかり、血圧が上昇することがあります。
おしっこが出ない
おしっこの回数が極端に減ったり、量が急に減ったときは、腎機能が低下している可能性があります。
妊娠が終わらないと完治は難しい
妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)になりやすいタイプ
●肥満の人
妊娠前の体重が標準体重より多かった人は、要注意です。BMIが25以上の人は、妊娠高血圧症候群になる可能性が高いようです。
●合併症のある人
自分や家族に高血圧や腎炎、心月蔵病など既住性の持病や既往症がある場合、妊娠によって症状が悪化し、妊娠高血圧症候群になる場合もあります。
●ストレスをため込みがちな人
ストレスを多くため込みがちな人や、睡眠不足で疲れがたまっている人は、妊娠高血圧症候群にもかかりやすい傾向があります。
●多胎妊娠
ふたごなどの多胎妊娠の場合、1人の妊娠にくらべて母体にかかる負担が大きくなるため、妊娠高血圧症候群にもかかりやすくなります。
●塩辛いものが好きな人
知らず知らずのうちに、塩分をとりすぎています。これが、高血圧やタンパク尿、むくみにつながることもあります。くれぐれも薄味に慣れましょう。
●高年初産の人
統計的に、35歳を過ぎてからの初産の場合、かかる割合が高くなります。とくに40歳以上の場合は、20代の2倍とのデータもあります。
日常生活での注意点
①食事は減塩、低カロリー、高タンパク
塩分の摂取量は1日10g(兆候があるママは7g以下)がベスト。塩分のとりすぎが原因の1つとされていることから、かつては塩分の摂取量を3~5gと指導していたこともありましたが、最低限の塩分は体に必要なものとして摂取量が設定しなおされました。1日トータルのカロリーを考え、適切な塩分量で、できるだけ良質のタンパク質を含んだ食事をしましょう。
②規則正しい生活リズム
精神的なストレスや疲労、睡眠不足などが続くと交感神経の緊張が続いた状態となり、妊娠高血圧症候群になりやすいといわれています。こまめに休けいをとりましょう。
③体重管理をする
体重は少しずつ増えていくのが理想的です。バランスの長い食事や適度な運動をして、極端な体重増加を防ぎましょう。1週間に500gぐらいの増加が目安です。こまめに体重計に乗る習慣をつけるといいでしょう。
④定期健診にきちんと通う
妊娠高血圧症候群は自覚症状がないため、検査によって発見されます。早期に対処することが一番なので、必ず健診を受けましょう。
⑤カルシウムをとる
カルシウムには血圧を下げる効果があります。カルシウムを多く含む食材を食事に取り入れるようにしましょう。